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血液検査項目解説:MPN

順天堂大学医学部 血液内科 小松 則夫

WBC

白血球数のことです。白血球は血液中の成分で異 物から体を守る働きがあり、その増減で血液の病 気や細菌の感染などを判断します。急性白血病、 慢性骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、感染症など で増加し、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群な どで低下します。

RBC

赤血球数のことです。赤血球は酸素を体中に運ぶ 働きをします。貧血や赤血球増加症があるかなど を調べます。赤血球数が少ない状態を貧血、赤血 球数が多い状態を赤血球増加症といいます。

HGB

ヘモグロビン濃度のことです。ヘモグロビンは酸 素と結合する色素蛋白で赤芽球の中で合成されて います。ヘモグロビン濃度が低下した状態を貧血、 ヘモグロビン濃度が増加した状態を赤血球増加症 といいます。

HCT

ヘマトクリットと呼びます。血液中の赤血球の容 積を示す値で貧血などの目安になります。PV で はHCT45% 未満を目標に瀉血を行う。

赤血球形態 (奇形赤血球)

正常赤血球の形態から逸脱した赤血球を奇形赤血 球と一括し、これらが目立つ場合を奇形赤血球症 といいます。様々な奇形赤血球があり、例えば球 状赤血球は先天性球状赤血球症や自己免疫性溶血 性貧血でみられ、標的赤血球はサラセミアでみら れます。涙滴(状)赤血球は骨髄線維症でみられ ます。

MCV

平均赤血球容積で、赤血球一個の平均の大きさを 表します。 ビタミンB12 欠乏性貧血や抗がん化学療法で DNA 合成障害が生じた時にMCV が高値となり ます。一方、鉄欠乏性貧血では低下します。

MCH

平均赤血球色素量で、赤血球一個に含まれる平均 のヘモグロビンの量を表します。 鉄欠乏性貧血や慢性炎症に伴う貧血で低下し、ビ タミンB12 欠乏性貧血や葉酸欠乏性貧血で高値 となります。

MCHC

平均赤血球色素濃度で、赤血球一個に含まれる平 均のヘモグロビンの濃度を表します。 鉄欠乏性貧血では低下します。高値になることは あまりありませんが、二次性多血症、ストレス多
血症、PV などで高くことがあります。

PLT

血小板数のことです。少なくなると出血しやすく なります。本態性血小板血症では増加し、再生不 良性貧血や骨髄異形成症候群などで低下します。

LDH

LDH(乳酸脱水素酵素)は、逸脱酵素と言って 細胞が壊れる時に血液中に出てきます。LDH は 肝臓、赤血球、筋肉、悪性腫瘍などにありますの で、肝炎などで肝臓が悪くなった場合、赤血球が 溶血などで壊れた場合、心臓の筋肉が溶ける心筋 梗塞の場合、そしてがん細胞のように増殖が盛ん な場合などにLDH 値が高くなります。

Blast

Blast とは芽球とも呼んで、形態学的にもっとも 幼若な血液細胞のことを指します。「白血病細胞 である可能性が高い細胞」を意味することが多く、 芽球の比率が末梢血あるいは骨髄血に20% 以上 になると急性白血病と診断します。末梢血に芽球 や赤芽球(若い赤血球)が出現することを白赤芽 球症と呼びますが、これは骨髄線維症を疑う重要 な所見です。

多染性赤血球

多染性赤血球とはやや大型で成熟赤血球より青み の強い赤血球のことで、骨髄から産生されて間も ない赤血球です。 別名、網(状)赤血球とも言 います。多染性赤血球が減少している場合には骨 髄で赤血球を作る能力が低下していることを意味 します。

大小不同

大小不同とは赤血球大小不同症といい、赤血球の 大きさがふぞろいになり,正常より大きいものや, 小さいものが多数出現する現象を言います。鉄欠 乏性貧血など、高度の貧血などの病的状態でみら れます。

赤芽球

赤芽球とは骨髄中にある赤血球の若い細胞で、最 も未熟な前赤芽球から好塩基性赤芽球、多染性赤 芽球、正染性赤芽球の順で成熟し、脱核(核が抜 けること)して末梢血に出てきます。これが網赤 血球で、24 時間で成熟赤血球になります。

骨髄球

骨髄球とは白血球の未熟な細胞のひとつです。骨 髄中の血液幹細胞(血液の種)から成熟(成長) して血液中の細胞成分である白血球(好中球、好 酸球、好塩基球、単球、リンパ球)や赤血球、血 小板が作られます。その成熟の過程でみられる細 胞に骨髄球というものがあります。 血液細胞と してはまだ未成熟なので、正常では血液中には出 てきません。骨髄球が血液中でみられた場合には 白血病などの血液疾患、感染症、癌の骨髄転移な どの可能性があります。

大型・巨大血小板

大型血小板とは正常な血小板(直径2 〜 3 μ m 程度)よりも大きい血小板(4 μ m 以上)を言
います。なかでも赤血球サイズ(約8 μ m)を 超えるものを巨大血小板と呼びます。巨大血小板 の増加は、血小板回転が亢進する場合(特発性血 小板減少性紫斑病や播種性血管内凝固症候群など、血小板の過剰な破壊に伴って多数の幼若な 血小板の産生がみられる時)、慢性骨髄性白血病 やET など、巨核球での分離膜異常による血小板 新生不全による場合、Bernard-Soulier 症候群や May-Hegglin 異常症など、遺伝性の血液疾患でみ られます。疾患の重症度とは特に関係しません。

凝固検査

凝固因子には、血液が固まる過程で内因系(血管 内の内皮細胞が傷ついてコラーゲン繊維などと接 触することによってゆっくりと凝固が進行)のみ に関係するもの、外因系(ケガをして血管が破れ た時など、大量に組織液が混ざった時に速やかに 凝固が進行)のみのもの、共通系のものあり、以 下のPT やAPTT の検査を組み合わせることに よって内因系、外因系、共通系のどこに異常があ るかを知ることができる。

PT (プロトロンビン時間)

外因系のスクリーニング検査で、凝固時間( 秒)、 活性%( 正常者に対する活性率)、PT 比( 凝固時 間の正常血漿に対する比率)、PT-INR( 国際標準 比International Normalized Ratio) で表します。 凝固時間は試薬や装置によって値にバラツキが生 じるため、機種間差、施設間差をなくすために考 案されたのがPT-INR で、経口抗凝固薬( ワーファ リン) 治療のモニタリングに利用されています。

APTT(活性化部 分トロンボプラスチ ン時間)

内因系のスクリーニング検査で。血友病や von Willebrand 病などで延長します。

Fib (フィブリノゲン)

血液凝固因子の1 つで、血液凝固のメカニズムの 最終段階でフィブリンという水に溶けない網状の 線維素となり、破れた血管を修復する糊のような 働きをします。肝機能障害や播種性血管内凝固症 候群(DIC) などで減少し、感染症や炎症などで増 加します。

FDP(フィブリン・ フィブリノゲン分解 産物)

血液を固める役割を果たしたフィブリンは、プラ スミンという酵素によって処理され、分解されま す。この作用を線溶といいますが、この時にでき る老廃物がFDP です。

エリスロポエチ ン値

腎臓から産生される造血因子で、赤血球産生の中 心的役割を担っている。貧血が生じるとエリスロ ポエチンの産生が亢進し、赤血球産生が高まる。 一方、赤血球増加症が生じるとエリスロポエチン の産生が低下し、赤血球産生が抑えられる。 PV では赤血球が腫瘍性に増加するため、エリス ロポエチンの産生が抑制され、血中エリスロポエ チン値は低下する。

ANISO

anisocytosis の略で、赤血球大小不同症のことで す(大小不同の項を参照してください)。

MICRO

microcytosis の略で、小赤血球症のことです。 MCV(MCV の項を参照してください) が低下した 状態で、鉄欠乏性貧血やサラセミア、慢性炎症に 伴う貧血でみられます。

TIBC ( 総鉄結合能)

血液中のトランスフェリン(鉄の運び屋)が鉄と 結合できる総鉄量を表しています。そのため、貧 血検査として用いられ、鉄欠乏性貧血の場合は高 い値を示し、悪性腫瘍や慢性炎症に伴う貧血の場 合には低下します。

FER(フェリチン)

組織鉄を貯蔵し、トランスフェリンとの間に鉄の 交換を行い、血清鉄の維持に当たっている。フェ リチンは肝細胞、膵臓、骨髄などの網内系細胞の ほか、肺や心臓、骨、腸管などほぼ全身に分布し ている。血清フェリチン濃度は体内貯蔵鉄量とよ く相関することが知られており、鉄欠乏性貧血で は低下し、赤血球輸血による鉄過剰状態では高値 となる。

HFR

高蛍光網赤血球比率のことです。高蛍光網赤血球 は幼若網赤血球で、妊婦の高度貧血で高値傾向が あるほか,重症貧血からの回復初期にも従来法の 網赤血球より早い時期から増加するとされていま す。

MFR

中蛍光網赤血球比率のことです。赤血球産生状 態を反映するIRF( 網赤血球成熟指数:Immature
Reticrocyte Fraction) は、高蛍光網赤血球比率 (HFR) と中蛍光網赤血球比率(MFR) の和で算出さ れますが、脱核直後の網赤血球が末梢血中に多い 場合には(赤血球産生が亢進している状態)、IRF が高値になります。

FRC

破砕赤血球分画のことで、血栓性微小血管障害症 の診断などの参考になります。

Bas

好塩基球のことです。好塩基球の中には沢山の顆 粒があり、その顆粒にヘパリンやヒスタミンを持 ち、数々のアレルギー反応に関連します。慢性骨 髄性白血病で増加します。

Lym

リンパ球免疫反応の中心的な役割をしています。 リンパ球数は、感染症、特にウイルス感染、結核 などの細菌感染でもリンパ球が増えます。腫瘍性 では、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白 血病、悪性リンパ腫、成人T 細胞白血病で増加 します。一方、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(エ イズの原因ウイルス)による感染など、さまざま な原因によって血液中のリンパ球の数が減少する ことがあります。また、飢餓状態、強いストレス を受けた時、ステロイド薬を使用している時、癌 の化学療法や放射線療法を受けている時などに も、一時的なリンパ球数の減少がみられることが あります。

 

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