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真性赤血球増加症(PV) Q&A

三重大学医学部 血液内科 杉本 由香

Q1.真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどのような病気ですか?

 骨髄増殖性腫瘍の一種で、特に赤血球産生が亢進し、いわゆる「血が濃くなる」病気ですが、白血球数や血小板数の増加を伴うことも多いです。血栓症を合併しやすく、下肢静脈血栓症や脳梗塞、心筋梗塞などの血栓症が最初の症状となることもあり、血栓症予防のための治療がPV 治療の基本となります。

Q2. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどこに分類されますか?

 血液腫瘍としては、PV は血液幹細胞がクローン性に増殖する骨髄増殖性腫瘍に分類されます。赤血球増加症としては、血液中の液体成分が少なくなるために見かけ上の赤血球量が多くなるストレス性多血症のような「相対的赤血球増加症」ではなく、本当に赤血球量が多い「絶対的赤血球増加症」に分類されます。PV は「絶対的赤血球増加症」の中でも赤血球が生体の調節機構のコントロールを逸脱してどんどん増加してしまう「一次性赤血球増加症」であり、赤血球を増やすホルモンであるエリスロポエチン濃度は低下していることが多いです。「二次性赤血球増加症」も「絶対的赤血球増加症」ですが、血中の高いエリスロポエチン濃度によって反応性に赤血球が多く産生されて赤血球量が多くなるという点がPV と異なります。

Q3. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどれくらい発症していますか?

 診断時の年齢中央値は60 歳代で、やや男性に多いと言われています。PV の年間発症率は年齢とともに増加し、人口10万人あたり0.01-5.87 人と幅があると言われています。日本では欧米と比較して発症率は低いと考えられています。

Q4. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の原因は何ですか?

 通常、赤血球量はエリスロポエチン(赤血球造血に関わるホルモン)などの働きにより適正範囲内にコントロールされています。エリスロポエチンが結合して赤血球造血のシグナルを細胞内に伝達する受容体のシグナル伝達の際に必要なタンパクであるJAK2 に異常が起こることで、このシグナル伝達のブレーキが効かなくなり、アクセルのみが踏みこまれるため、赤血球がどんどん増殖してしまいます。PV の98% 以上とほとんどの症例にJAK2 タンパクを作製する際の鋳型であるJAK2 遺伝子の変異が認められます。

Q5. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の症状や合併症について教えてください。

 血が濃くなり、血液粘稠度が増加することによる様々な症状が出現します。よく認められる症状としては頭痛、めまい、視覚異常、感覚異常、皮膚掻痒症、肢端紅痛症(足や手が赤くなり、焼けつくような痛みが起こる)や痛風などがあります。合併症としては高血圧症や深在性静脈血栓症、心筋梗塞、脳梗塞などの静脈、動脈血栓症などがあります。

Q6. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどのように診断されますか?

 2017 年に刊行されたWHO 分類では、大基準は1. ヘモグロビン増加(男性:>16.5 g/dL, 女性:>16.0 g/dL )、ヘマトクリット増加(男性:>49%, 女性:>48%)、または循環赤血球量増加(平均予測正常値より25% 増加)があること、2. 骨髄生検で三系統の血球増加を伴う過形成髄であること、 3.JAK2 V617F またはJAK2 exon12 変異が存在すること、小基準は血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること、とされています。このうち、大基準3 つ、または大基準の最初の2 つと小基準を満たした場合に真性多血症と診断されます。2008 年のWHO 分類とは異なり、基本的にはPV の診断に骨髄生検が必須となりました。

Q7. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の合併症の原因は何ですか?

 血栓症が最も多くみられる合併症ですが、ヘマトクリット値が上昇することによる血液過粘稠(血液が濃くなり、ドロドロになること)、増加した血小板同士または血小板と白血球の相互作用による凝集塊の形成、赤血球と血管内皮細胞との相互作用などが血栓症と関連していると言われていますまた、血小板数が100 万/μL を超えるなど血小板増多が目立つ症例では出血傾向が認められることがありますが、これは、フォン・ヴィレブランド因子という血小板粘着時に血小板とコラーゲンの間を埋める糊のような働きをする血漿中の糖タンパクが、増加した血小板による吸着や、活性化した血小板による蛋白分解亢進によって活性が低下し、二次性フォン・ヴィレブランド病という出血しやすい病態になるためと考えられています。肝臓や脾臓の腫大は通常は成人では骨髄でのみ行われる造血が肝臓や脾臓で行われる(髄外造血)ためです。

Q8. どのようにして合併症のリスクを減らしたらよいでしょうか?

 合併症として最も多い血栓症を減らすために、糖尿病や脂質異常症、高血圧症、肥満などの状態の十分な管理を行うことが推奨されています。 また、喫煙は、PVの患者さんで動脈血栓症のリスクとなることが報告されていますので、禁煙をすることはとても重要です。

Q9. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の初期治療はどのようにされますか?

 まず、血栓症のリスクを減らすため、血液のドロドロ状態を改善させる目的で、1回200〜400cc の瀉血(献血と同じ量です)を月に1〜2回のペースで行います。高齢者や心血管障害があるPV 患者さんでは、循環動態が急激に変化しないように100〜200cc 程度の少量の瀉血を頻回に行うこともあります。

Q10. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の初期治療の後は、どのような治療をしますか?

 血栓症の低リスク群(年齢<60歳、かつ血栓症の既往がない)の患者さんに対しては、瀉血に加えて出血傾向が危惧されない状態であれば低用量アスピリンの内服をすすめます。高リスク群(年齢≧60 歳、または血栓症の既往がある)の患者さんに対しては、上記に加えて抗腫瘍薬による細胞減少療法をすすめます。細胞減少療法の第一選択はヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア、商品名:ハイドレア )ですが、ヒドロキシカルバミドが副作用で服用できない、または効果が十分でない患者さんには最近ではルキソリチニブ(商品名:ジャカビ )が保険適応となりました。瀉血や抗腫瘍薬でヘマトクリット値を45% 未満にコントロールすると、45-50% にコントロールをした場合と比較して心血管イベントや血栓症の発症率を低下させることができると報告されており、一般的にはPV の患者さんではヘマトクリット値を45% 未満にコントロールするようにします。

Q11. 瀉血は危険ですか?

 瀉血は献血と同様の処置なので、一般的に危険性は少ないと考えられます。場合により、瀉血後に500 mL の脱水予防のための点滴を行うこともあります。通常、瀉血後に経口補水液(OS-1 経口補水液やアクエリアス経口補水液などが市販されています)などで水分をしっかり補給してもらうようにしています。

Q12. 瀉血後の症状を軽減するために患者ができることはありますか?

 瀉血した量の血液分だけ出血したのと同じ状態ですので、脱水にならないように瀉血後に経口補水液(Q11 で前述)などでしっかり水分を補うことが重要です。

Q13. 瀉血が唯一の治療法ですか?

 ヘマトクリット値を低下させ、血栓症を予防するという点において、最も簡単、かつ安全に行えるという点では唯一ですが、ヘマトクリット値を低下させるためには他に抗腫瘍薬による細胞減少療法もあります。

Q14. 瀉血後に鉄欠乏がある場合にはどうしたらよいですか?

 瀉血には物理的に血を抜くことで血液粘稠度を低下させ、血液ドロドロの状態を改善させる即効性があります。また、瀉血は人工的に出血させていることと同様ですから、赤血球を作るために体が必要とする鉄を枯渇させ、鉄欠乏状態を作り、新しい赤血球がつくられにくくして血を薄くする目的もあります。400 mL の瀉血で200 〜400 mg の鉄が除去されると言われています。鉄欠乏にすること自体が瀉血の目的でもありますので、鉄欠乏があっても鉄を補充したりすることはなく、そのまま様子を見ます。

Q15. 鉄欠乏の状態は患者の体にどのような影響を与えますか?

 鉄は体内で酸素を運搬するほか、ブドウ糖からエネルギーを生み出すために重要な役割を担ったり、酵素の成分として活性酸素から体を守ったりする働きも担っています。鉄が不足すると、疲れやすくなったり、イライラしたり、頭痛を起こしやすくなるなどの症状が出ることがあります。

Q16. PVでは、鉄分の多い食品は控えたほうが良いですか?

 Q14 にも記載したように、瀉血の目的の一つは鉄欠乏状態を作り、赤血球の産生を抑制することです。そのため、瀉血をしているPV 患者さんは少なくとも鉄分の多い食品は控えたほうが良いと思われます。

Q17. 治療選択肢には瀉血以外にどのようなものがありますか?

 PV 治療のゴールは血栓症や出血症状の予防と自覚症状の改善、二次性骨髄線維症や二次性白血病への移行を減らすことです。血栓症予防や自覚症状改善のための抗血小板療法としては低用量アスピリンの内服があります。また、瀉血以外にヘマトクリット値を低下させ、血栓症や出血症状の予防、自覚症状の改善を目的とする細胞減少療法としては抗腫瘍薬の投与があります。一般的に第一選択はヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア、商品名:ハイドレア )ですが、ヒドロキシカルバミドが副作用で服用できなかったり、効果が十分でなかったりす る患者さんにはルキソリチニブ(商品名:ジャカビ )を使用することもあります。そのほか、ブスルファン(商品名:マブリン)の服用やラニムスチン(商品名:サイメリン)の点滴を行うこともあります。残念ながら、現時点では、二次性骨髄線維症や二次性白血病への移行を減らすという明確なデータを持つ治療法はありません。

Q18. ヒドロキシカルバミドについて教えてください。

 代謝拮抗薬に分類される内服の抗がん剤(商品名:ハイドレア)です。2006 年に発表されたわが国の大規模調査の結果ではPV 患者さんの約半数で処方されていると報告されています。赤血球数のみならず、白血球数や血小板数も低下させます。元々は慢性骨髄性白血病に保険適応がありましたが、2013年にPV とET にも正式に適応拡大されました。脾臓の縮小効果もあるので、MF に使用されることもあります。二次発がんに関しては、ヒドロキシカルバミド単独で服用した場合にはあまり心配はないと言われています。 発売元の製薬会社で用意した冊子がありますので、ご参照ください。
『ハイドレアカプセルを服用される患者さまへ』
https://www.bms.com/assets/bms/japan/documents/11-27-17/HDpatient1607.pdf
監修:がん研究会有明病院 血液腫瘍内科 畠 清彦 先生
ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 2016年6月作成

Q19. 患者はどのくらいの期間ヒドロキシカルバミドやその他の薬を服用しなければならないですか?

 基本的にはヒドロキシカルバミドやその他の薬はずっと飲み続けることになりますが、くすりの量はその時の血球数によって主治医が調節します。通常、毎日服用することが多いですが、血球数によっては数日おきに内服するだけで血球数のコントロールが可能な場合もあります。

Q20. ヒドロキシカルバミドを服用していても、瀉血を行わなければならないですか?

 ヒドロキシカルバミドを服用するとヘマトクリット値が低下し、瀉血が必要なくなることも多いですが、ヒドロキシカルバミドの服用だけではヘマトクリット値のコントロールが難しい場合は瀉血を同時に行うこともあります。

Q21. ヒドロキシカルバミドには脾臓縮小効果がありますか?

 40% 程度に脾臓の縮小効果が見られますが、持続する割合は15%程度です。脾臓縮小効果はルキソリチニブ(商品名:ジャカビ )の方がヒドロキシカルバミド(商品名:ハイドレア)より優れています。

Q22. 脾腫があり、わき腹や左背中上部に鈍痛がある場合は運動してもよいですか?安静にした方がよいですか?

 脾腫があり、左脇腹に強い痛みがあった場合には脾梗塞の可能性がありますが、脾梗塞の痛みは鈍痛ではありません。強い痛みがあった場合には、MRI やCT などの画像検査で脾梗塞を診断できますので、主治医に相談してください。脾臓が大きい場合には外傷性の脾破裂を起こす可能性がありますので、脾臓に直接圧力がかかるような過激な運動は避け、転倒にも注意しましょう。鈍痛程度で運動によって痛みが増強しないのであれば、軽い運動は特に問題ありません。

Q23. PVの妊娠、出産については可能ですか?可能な場合どのようなリスクがありますか?

 若年女性のPV 患者さんの割合は少なく、10 万人に0.3人以下と言われており、PV 患者さんの妊娠、出産に関してのデータは多くはありません。妊娠、出産は可能ですが、流産、早産、死産、胎盤早期剥離、低体重児出生や、母親の妊娠高血圧腎症や下肢静脈血栓症、肺梗塞などの血栓症のリスクが報告されています。妊娠、出産時は血液内科医と産婦人科医との連携が必要になりますので、血液内科専門医のいる病院での出産をおすすめします。妊娠、出産を希望されるPV 患者さんはあらかじめ血液内科の主治医の先生と相談してください。

Q24. PV患者にとってインターフェロンは良い治療薬・選択肢ですか?

 インターフェロンは抗がん剤ではないので二次発がんのリスクがなく、また、胎盤通過性がないので催奇形性もありません。若い患者さんや妊娠希望の患者さんにも比較的安全に使用することができるという点では良い治療薬・選択肢です。インターフェロンは血球数をコントロールできるだけでなく、JAK2 V617Fアレルバーデン値(JAK2 変異率)を低下させることもできると言われています。ただし、Q26 のような副作用が認められ、使用継続ができない場合があることや、日本では保険適応がなく、使用にあたっては自費での負担になるという問題点もあります。

Q25. インターフェロンはどのように投与されますか?

 インターフェロンは皮下注射と筋肉注射が可能ですが、通常、皮下注射を連日または週3 回行います。自己注射も可能です。インターフェロンの血中濃度が長時間維持されるペグインターフェロンは週1 回の皮下注射です。どちらも現時点では日本では保険適応がなく、使用にあたっては自費での負担になります。

Q26. インターフェロンの副作用は何ですか?

 通常のインターフェロンの副作用としてはインフルエンザ様症状(発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感など)や食欲不振、脱毛、甲状腺機能異常、うつ状態、視力障害、糖尿病などがあります。 ペグインターフェロンではこれらの副作用は通常のインターフェロンより軽いと言われます。

Q27. 注射以外のインターフェロンはありますか?

 残念ながら現時点ではありません。

Q28. イマチニブ(商品名:グリベック)は真性赤血球増加症/真性多血症(PV)に有効ですか?

 一部の症例でヘマトクリットを低下させ、瀉血の必要回数を減少させたり、白血球数や血小板数の低下が認められるたりすると報告されていますが、JAK2 V617F のアレルバーデンは低下させないと言われています。PV 患者さんへの保険適応はありませんし、臨床的にはあまり有用でないと考えられています。

Q29. その他に新しい治療薬は何がありますか?

 Ropeginterferon alfa-2b という新しい長時間作用型のモノペグ化プロリンインターフェロンは2-4 週間に1 回の投与で良いという新しいインターフェロン製剤です。なおかつ純度が高いのでQ.26 に挙げたような副作用が通常のインターフェロンに比べると非常に少なく、PV の新規治療薬として非常に有望視されています。学会発表のデータですが、欧米で行われたヒドロキシカルバミドとの比較試験ではJAK2 V617F のアレルバーデン値を高率に有意に低下させ、副作用に関してもヒドロキシカルバミドと同程度しか認められなかったという報告があります。近いうちに日本でも治験が開始されるかもしれません。

Q30. PVは、必ず、何年か先には、骨髄線維症に移行しますか?

 PV の患者さんがMF に移行する率は12-21% と言われており、全ての患者さんが必ずMF に移行するわけではありません。MF に移行するリスクとしては罹病期間が長いこと、診断時の年齢(60 歳以上)、白血球数(15,000/ μ L 以上)、脾腫があること、JAK2 V617F のアレルバーデン値が高いこと、血清LDH 値が高値であること、骨髄に細網線維の増生があることなどが報告されています。

Q31. ETからPVに移行した場合は、MFやAMLに移行しやすいのですか?

  ET からPV へ移行した場合にMF やAML への移行が高まるというデータはありません。ただし、ET よりPV の方がJAK2 V617F のアレルバーデン値が高いと言われており、またPV の中でJAK2 V617F のアレルバーデン値が高い症例はMF に移行しやすいと報告されています。経時的にJAK2 V617F のアレルバーデン値を測定することでMF への移行を予測できる可能性があります。AML に移行しやすいリスクとしては年齢が70 歳を超えている、アルキル化剤を使用している、などがあります。

Q32. PVから、骨髄線維症にならないようにするためには、JAK2遺伝子の変異率を下げなければなりませんか?変異率を下げる薬は、ジャカビだけでしょうか?

 PV 患者さんのMF 移行リスクとして、診断時の年齢(60歳以上)、白血球数(15,000/ μ L 以上)、脾腫があること、血清LDH 値が高値であること、骨髄に細網線維の増生があることなどの他、JAK2 V617F のアレルバーデン値が高いことが報告されています。  ヒドロキシウレアはあまりJAK2 V617F のアレルバーデン値を減少させず、むしろ増加させたという報告もあります。ジャカビはJAK2 V617F のアレルバーデン値を低下させると報告されていますが、その低下率は軽度であり、長期服用で骨髄の線維化が改善したという報告もありますが、線維化を予防するかどうかはまだ明らかではありません。JAK2 V617F のアレルバーデン値はインターフェロンで有意に低下すると言われており、今後、日本でも保険適応となり、日常診療で使用できるようになることが期待されます。

Q33. ジャカビ服用中の注意事項を教えてください。

 免疫抑制作用がありますので、感染症(帯状疱疹、尿路感染、B 型肝炎ウイルスの再活性化、結核など)に注意をする必要があります。熱が出る、皮膚がピリピリ痛い、排尿時に痛みがある、咳、痰が良くならないなど感染症を疑うような症状が出た時は主治医に連絡しましょう。また、ジャカビは急に服用を中止すると、全身倦怠感や微熱など服用前にみられた症状が強く出ることがあり、これを離脱症候群と呼びます。ジャカビの服薬を中止する際は徐々に減量するか、ステロイドを併用することが必要な場合がありますので、自己判断で服薬を中止することはせず、必ず主治医に相談しましょう。

Q34. ジャカビの副作用に貧血や太るとありますが、その副作用時の対処法を教えてください。

 PV の患者さんではジャカビの貧血の副作用がヘマトクリット値を低下させ、血栓症を予防する治療効果につながるため、貧血に関しては問題となることはあまりないかもしれません。MF 患者さんではジャカビ服用後3ヶ月目くらいから徐々に貧血は改善する傾向があり、蛋白同化ステロイドホルモンやエリスロポエチン製剤を使用することもありますが、日常生活に支障をきたすような貧血の場合は赤血球輸血で対応している場合が多いです。 ジャカビの副作用の肥満に関しては、MF に対する臨床試験で5% 以上に認められました。ほとんどの場合、治療を始めた時の体重から2割程度の体重増加にとどまっていますが、それ以上体重が増加する場合には主治医に相談してください。ジャカビの減量や休薬、中止を行う場合もありますが、基本的には栄養指導を受け、カロリー制限を行ったり、定期的な運動を行ったりするなど、生活スタイルの修正をすることで対処をします。

Q35. ジャカビ服用中に別のがんが発覚した場合、 治療(手術、治療薬)に制限等有りますか?

 これに関しては正確なデータがあるわけではありませんが、手術をするというだけでジャカビを中止する必要はないと言われています。しかし、ジャカビは内服薬しかありませんので、しばらく薬剤の服用ができない胃や腸など消化管の手術をする際には、離脱症候群(Q33 参照)を予防するため、手術の1 週間ほど前からジャカビを徐々に減量、中止する必要があります。服用薬に関しては、CYP3A4(シトクロムP450 の分子の一つであり、重要な薬物代謝酵素の一つ)阻害薬や誘導薬が併用されることで、ジャカビの血中濃度が上昇したり、低下したりするため、ジャカビの効果に影響を与える可能性があり、注意をする必要があります。CYP3A4 阻害薬として代表的なものにクラリスロマイシンやシプロフロキサシンなどの抗生物質やジルチアゼムなどの降圧薬、シメチジンなどの制酸薬があります。また、CYP3A4 誘導薬として代表的なものにリファンピシンという抗結核薬やフェニトインという抗てんかん薬などがあります。

Q36.骨髄移植は考慮した方が良いですか?

 PV から二次性骨髄線維症や二次性白血病に移行した場合には、65 歳以下などの移植可能年齢であれば、造血幹細胞移植を考慮するする必要がありますが、そうではないPV の患者さんに対しては血栓症の予防が治療の第一であり、造血幹細胞移植が考慮されることは通常はありません。

Q37.PVの痒みやその他の症状に対して患者は何ができますか?

 PV に対する痒みに対しては、ジャカビが有効であるとされています。また、抗ヒスタミン薬や選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)なども用いられます。PV 患者さん自身が痒みに対してできることとしては、入浴時に皮膚を強くこすりすぎずにやさしく洗ったり、保湿効果の高いクリームを皮膚に塗ったりすることなどがあります。

Q38.PVのJAK2V617Fアレルバーデン値はどのくらいですか?

 欧米からの報告では平均50% くらいですが、日本からの報告では平均70% 台とやや高いです。

Q39.PVはアスピリンを服用した方が良いですか?

 PV 患者さんでは低用量アスピリンが出血のリスクを増加させずに有意に心血管イベントや血栓症のリスクを低下させることが証明されているので、一般的には服用した方が良いです。ただし、血小板数が100 万/μL 以上など、二次性フォン・ヴィレブランド病による出血傾向が懸念されるPV 患者さんではフォン・ヴィレブランド因子活性を測定し、30% 未満の場合は、アスピリンの使用は控えます。このような場合には抗腫瘍薬による細胞減少療法により血小板数が低下し、フォン・ヴィレブランド因子活性が30% 以上に上昇してから低用量アスピリンの服用を開始します。

 

 

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