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真性赤血球増加症(PV) Q&A

Q1.真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどのような病気ですか?

骨髄増殖性腫瘍のひとつで赤血球が異常に増加し血液が濃くなる病気です。しばしば白血球や血小板も増加します。血栓症を合併しやすいので、治療が必要です。脳梗塞や心筋梗塞を発症して、初めて診断されることもあります。

Q2. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどこに分類されますか?

骨髄増殖性腫瘍の一つで、赤血球増加症では身体の中を流れている赤血球が増加し、しかも血液細胞側に異常を認める"絶対的赤血球増加症"の"一次性"に分類されます。"二次性"とはおもに赤血球産生に関わるエリスロポエチンが高くなったことで赤血球が増加した場合を指します。したがって血液中のエリスロポエチン濃度は真性赤血球増加症では低下し、二次性では高くなります。

Q3. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどれくらい発症していますか?

発症は人口10万あたり2人と言われていますが、日本人の正確なデータはありません。どのような人が発症するのか、まだわかっていません。

Q4. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の原因は何ですか?

エリスロポエチン(赤血球を造る重要な因子で腎臓から産生されます)などの造血因子はその受容体(アンテナに相当)に結合し、信号を細胞内に伝達するのですが、その信号を増幅する分子であるJAK2に異常のあることがわかってきました。なぜその異常がおこるのかについてはまだよくわかっていません。JAK2にはアクセルとブレーキに相当する部分がありますが、PVではブレーキ部分に故障があり、ブレーキが効かないので、アクセルのペダルが常に踏まれた状態になり血液が増えてしまいます。

Q5. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の症状や合併症について教えてください。

頭が痛い、頭が重い、眩暈、顔が赤い、眼瞼結膜や口腔粘膜が充血する、などの症状がみられます。顔が赤いので、酒酔い運転と間違えられることがあります。合併症としては高血圧症、血栓症・塞栓症(脳梗塞や心筋梗塞、静脈血栓症など)、血小板の働きが悪くなって出血しやすくなる、などが挙げられます。血小板増加を伴う患者さんではさらに肢端紅痛症がみられることがあります。これは血栓によって動脈がつまったことで起こります。手足の先に非対称性に焼けたような痛みをもった赤く充血した腫れで下肢に多くみられます。起立、運動等が誘因となり、足の挙上、冷却などの処置で軽快します。痛風発作もしばしばみられます。皮膚のかゆみもみられますが、特に入浴後に多いですね。

Q6. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)はどのように診断されますか?

2016年に発表されたWHO分類第4版改訂版に準じて診断されますが、まずは血液検査で赤血球数増加、ヘモグロビン濃度高値、ヘマトクリット値上昇を認め、血清エリスロポエチン濃度が低下していれば、PVが強く疑われます。さらにJAK2の遺伝子変異(V617F、exon12変異)を認めれば、診断が確定します。JAK2の検査が行われていない場合、変異がない場合には骨髄検査も診断に必須です。線維化を認めれば将来骨髄線維症に移行する可能性がありますので、診断だけでなく、将来のことを考えると骨髄生検を含めた骨髄検査は行うべきでしょう。

Q7. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の合併症の原因は何ですか?

血栓症が最も多くみられる合併症です。ヘマトクリット値の上昇による血液粘稠度の亢進(血液ドロドロ状態)、増加した血小板同士あるいは血小板と白血球との相互作用による凝集塊の形成、赤血球と内皮細胞との相互作用も血栓症の形成に関与している可能性があります。

Q8. どのようにして合併症のリスクを減らしたらよいでしょうか?

血栓症の合併を減らすには、PVの治療を適切に行う他に、心血管危険因子を減らすことが重要です。心血管危険因子とは高血圧症、肥満、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、喫煙のことです。特に喫煙による血栓症の危険度は4倍に増加すると言われていますので、禁煙は必ず実行してください。

Q9. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の初期治療はどのようにされますか?

最初は瀉血(献血と同じ)を行います。一回に200mlから400mlの瀉血を行い、ヘマトクリット値を45〜50%未満を目標値にします。何歳まででも可能ですが、高齢者や心臓病をお持ちの患者さんでは一回に100ml程度の少量瀉血を繰り返すこともあります。

Q10. 真性赤血球増加症/真性多血症(PV)の初期治療の後は、どのような治療をしますか?

瀉血のみでコントロール可能な場合もありますが、年齢が60歳以上、あるいは血栓症を過去に起こした事がある場合には今後血栓症を合併する可能性が高いので、血球を減少させるための治療が必要になります。それが抗腫瘍薬です。ヒドロキシカルバミド(ヒドロキシウレア、商品名:ハイドレア)が使用されることが多いですね。

Q11. 瀉血は危険ですか?

献血と同じことですから、危険性は極めて少ないですね。200ml程度であれば、特に何をしなくても問題ありません。400mLの場合には瀉血後に500mlの点滴を行います。最近では点滴と同じ効果のある飲料水(OS-1)がありますので、それで水分を補うのが良いでしょう。

Q12. 瀉血後の症状を軽減するために患者ができることはありますか?

水分を十分に補うことが重要です。OS-1(前述)がお薦めです。ただし塩分が多いので、瀉血後や汗を大量にかいた時だけに限った方が良いでしょう。

Q13. 瀉血が唯一の治療法ですか?

最も簡単かつ安全に行えるという点では唯一ですが、他にも抗腫瘍薬も使用することがあります(Q17をご覧ください)。

Q14. 瀉血後に鉄欠乏がある場合にはどうしたらよいですか?

瀉血の目的は2つあります。一つは瀉血によって血液粘調度を低下させて血液どろどろ状態を改善します。もう一つは鉄欠乏状態にして赤血球の産生を抑制します。赤血球をつくるには鉄が必要ですから、その材料である鉄を除去することで赤血球産生が低下します。400mlの瀉血で200mgの鉄が除去されます。これは鉄の一日必要量が1mgですから、200日分に相当します。

Q15. 鉄欠乏の状態は患者の体にどのような影響を与えますか?

鉄は3分の2がヘモグロビンの中にあり、残り3分の1は貯蔵鉄として蓄えられていますが、わずかに非ヘム含鉄酵素にも含まれていますので、鉄が不足すると酵素活性が低下し、代謝が低下するため、エネルギー産生低下による疲労感や頭痛、自律神経失調症状がみられるようになります。

Q16. PVでは、鉄分の多い食品は控えたほうが良いですか?

PVの患者さんは治療として瀉血を行うことがあります。この治療の目的はヘマトクリット値を急速に下げて血液粘調度を低下させ、血液の流れをスムースにすることですが、さらに瀉血によってわざと鉄欠乏状態にして赤血球の産生を抑えるという別の目的もあります。したがって瀉血を行っている患者さんは少なくとも鉄分の多い食品の摂取は控えた方がよいでしょう。

Q17. 治療選択肢には瀉血以外にどのようなものがありますか?

瀉血以外にヘマトクリット値を低下させる方法として、抗腫瘍薬の投与があります。最も多く用いられているのがヒドロキシカルバミド(商品名:ハイドレア)です。2015年9月にはハイドレア不耐容(副作用のために服用できない)または耐性(効果が期待できない)の場合には分子標的薬であるJAK2阻害薬ルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)が使用できるようになりました。その他にブスルファン(商品名:マブリン散)の内服やラニムスチン(商品名:サイメリン)の点滴を行います。

Q18. ヒドロキシカルバミドについて教えてください。

代謝拮抗剤に分類される抗がん剤です。赤血球や血小板だけでなく、白血球も減少しますので、対象疾患はPV、ET、慢性骨髄性白血病(チロシンキナーゼ阻害薬の登場によって使用頻度は減少)です。MF では脾臓を縮小させる効果があります。抗がん剤ですから、二次発がんのことが気になりますが、単独で服用した場合にはほとんど心配する必要はないと思われます。発売元の製薬会社で用意した冊子がありますので、ご参照ください。 『ハイドレアカプセルを服用される患者さまへ』
https://www.bms.com/assets/bms/japan/documents/11-27-17/HDpatient1607.pdf
監修:がん研究会有明病院 血液腫瘍内科 畠 清彦 先生
ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社 2016年6月作成

Q19. 患者はどのくらいの期間ヒドロキシカルバミドやその他の薬を服用しなければならないですか?

基本的にはヒドロキシカルバミドは飲み続けることになりますが、血液の状態をみながら、量の調節をすることになります。毎日服用することが多いですが、場合によっては週に2〜3回の服用でコントロールが可能になることもあります。

Q20. ヒドロキシカルバミドを服用していても、瀉血を行わなければならないですか?

ハイドレアだけでコントロールが難しい場合には瀉血を同時に行うことがあります。

Q21. ヒドロキシカルバミドには脾臓縮小効果がありますか?

40%程度に脾臓縮小効果がみられますが、持続する割合は15%です。海外の臨床試験から脾臓縮小効果はジャカビの方がハイドレアに比べて優れていることは証明されています。

Q22. 脾腫があり、わき腹や左背中上部に鈍痛がある場合は運動してもよいですか?安静にした方がよいですか?

脾腫があり、左脇腹に痛みを覚えた場合には脾梗塞の可能性があるのですが、痛みは強く、鈍痛ではありません。MRIやCTでわかりますので、主治医に相談してください。脾臓が大きい場合には外傷性の脾臓破裂の危険がありますので、脾臓に直接圧力がかかるような過激な運動は避け、転倒にも注意しましょう。鈍痛程度であり、運動によって痛みが増強しないのであれば、軽い運動は特に問題ないでしょう。

Q23. PVの妊娠、出産については可能ですか?可能な場合どのようなリスクがありますか?

PVの妊娠や出産は可能ですが、お腹のなかの赤ちゃんに影響が少ないインターフェロンによる治療が海外では推奨されています。日本では保険適用外ですので、施設によっては病院の倫理委員会の承認を得て使用できるかもしれませんが、各施設の方針や状況によって異なりますので、主治医にお尋ねください。PVでは正常の方に比べて流産、早産、低体重児、死産が多いと言われていますので、血液内科専門医のいる病院での出産をお勧めします。

Q24. PV患者にとってインターフェロンは良い治療薬・選択肢ですか?

インターフェロンは発癌性や催奇形性がないので、若い患者さんや妊娠希望(中)の患者さんにも比較的安全に使用することができますが、Q26のような副作用がみられることがあり、途中で中止しなければならないこともあります。

Q25. インターフェロンはどのように投与されますか?

主に皮下注射で、従来のインターフェロンは連日または週3回注射(筋肉または皮下)が必要ですが、自己注射も可能です。ペグインターフェロンは週1回の注射(皮下)で効果が出ます。若年者や妊娠を希望されている女性や、胎盤通過性がないので妊婦に使用できます。使用にあたってはやはり自費負担となります。

Q26. インターフェロンの副作用は何ですか?

通常のインターフェロンではインフルエンザ様症状(発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛など)、甲状腺機能異常、うつ状態、視力障害などの副作用があります。半減期の長いペグインターフェロンはこれらの副作用は少なく、骨髄抑制が強いので、PVの患者さんに用いるのに都合がいいのです。

Q27. 注射以外のインターフェロンはありますか?

残念ながらありません。

Q28. イマチニブ(商品名:グリベック)は真性赤血球増加症/真性多血症(PV)に有効ですか?

瀉血の回数が少なくなったり、白血球や血小板の低下がみられています。なかには瀉血が必要なくなった例もあります。しかしJAK2V617Fのアレルバーデン値は低下しないと報告されています。この薬剤のPV患者への保険適用はありません。

Q29. その他に新しい治療薬は何がありますか?

最近ではJAK2阻害薬が開発され、骨髄線維症で脾腫の軽減、全身症状(盗汗、体重減少、発熱、掻痒感)の改善を認めています。JAK2阻害薬のひとつであるルキソリチニブを4年間服用すると約2割の患者さんで線維化がよくなると報告されています。この薬剤は日本でも平成26年秋に骨髄線維症(原発性骨髄線維症とPVや本態性血小板血症から移行した骨髄線維症)の患者への使用が承認されました。PVの患者さんも効果があり、約4割の患者さんに35%以上の脾臓縮小率を認め、ヘマトクリットの低下も60%の患者さんでみられています。国内での臨床試験も終了し、2015年9月にハイドレア不耐容(副作用のために服用できない)または耐性(効果が期待できない)の患者に使用できるようになりました。

Q30. PVは、必ず、何年か先には、骨髄線維症に移行しますか?

骨髄線維症とは骨髄の中に線維性の物質でクモの巣が張られたような状態になることを言います。同時に血液をつくる場所が脾臓に移動し、脾臓が腫れることになります(脾腫)。12-21%のPV患者さんが骨髄線維症に移行すると言われています。全例が骨髄線維症に移行するわけではありません。その危険因子としては、罹患期間(発症からどのくらい経過しているか)、診断時の年齢(60歳以上)、白血球数(15,000/μL以上)、脾臓腫大、初診時の骨髄生検で線維化を認める、高いJAK2V617Fアレルバーデン値などが挙げられます。

Q31. ETからPVに移行した場合は、MFやAMLに移行しやすいのですか?

ETからPVへと移行してもMFやAMLへの移行が高まるということではありません。ただしJAK2V617Fのアレルバーデン値が高いETやPV患者さんは骨髄線維症に移行しやすいと言われています。インターフェロンでは骨髄線維症の軽減や急性白血病への移行を防ぐ効果があるかもしれません。2016年の米国血液学会で、インターフェロンとハイドレアとの比較試験の結果が発表されましたが、IFN群では急性白血病の発症は認められませんでした。インターフェロンの治療については現時点では保険適用は認められておらず、日本で行われるかもしれない臨床試験に期待したいと思います。

Q32. PVから、骨髄線維症にならないようにするためには、JAK2遺伝子の変異率を下げなければなりませんか?変異率を下げる薬は、ジャカビだけでしょうか?

PVで骨髄線維症に移行するリスク因子として、罹患期間(発症してからどのくらい経過しているか)が長いことが言われていますが、ご指摘のように、JAK2の変異率が高い方、あるいは経過中に変異率が高くなる方は骨髄線維症に移行する可能性があります。一般にジャカビによる変異率の低下は軽度で、長期服用することによって骨髄の線維化が軽減したとの報告はありますが、ジャカビが骨髄線維症の進行を遅らせるという報告は現時点ではありません。変異率はインターフェロン投与によって明らかに低下しますが、日本では保険による使用が認められていません。

Q33. ジャカビ服用中の注意事項を教えてください。

免疫抑制がみられますので、特にウイルス感染(B型肝炎ウイルスの再活性化、帯状疱疹など)や結核などの抗酸菌症に注意する必要があります。服薬を急に中断すると服薬前にみられた症状が強く出ることがあります(離脱症候群と言います)ので、中止する必要がある場合には徐々に減量するか、ステロイドを用いることもあります。

Q34. ジャカビの副作用に貧血や太るとありますが、その副作用時の対処法を教えてください。

貧血はなかなか避けられない副作用ですが、投与後3カ月頃から徐々に回復する傾向にありますが、個人差はあります。海外ではエリスロポエチンを使用する場合もあるようですが、日本では保険適用がありません。日常生活に支障が生じる程度の貧血であれば、赤血球輸血を考慮する必要があります。ジャカビ服用後に食欲が出て太る方がいらっしゃいます。食事療法(カロリー制限)と、運動が可能であれば運動療法を推奨しています。食事療法については栄養士と相談してみてください。

Q35. ジャカビ服用中に別のがんが発覚した場合、 治療(手術、治療薬)に制限等有りますか?

正確にお答えするにはデータの集積が必要ですが、手術のためにジャカビを減量する必要はないと考えます。胃や大腸などの消化管の手術でジャカビが服用できない場合には離断症候群(前出)を回避するため、手術の1週間前から徐々に減量することが重要です。 クラリスロマイシンなどのCYP3A4阻害剤(CYP3A4とはシトクロムP450(CYP)の分子種の一種であり、人体に存在する生体異物を代謝する酵素の主要なものの1つ)との併用などはジャカビの代謝(分解)が遅れ、血中濃度が高くなる可能性がありますので、併用は避けるか、併用する場合には副作用の発現に十分注意しましょう。抗結核薬であるリファンピシンなどのCYP3A4誘導剤ではジャカビの血中濃度が低下し、本剤の有効性が減弱する可能性があるので、CYP3A4誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮する必要があります。

Q36.骨髄移植は考慮した方が良いですか?

血栓症の合併や骨髄線維症、急性白血病への移行がなければ、寿命は健常者と変わりません。したがって骨髄線維症や急性白血病に移行した患者さんで65歳以下の場合には骨髄移植を考慮する必要がありますが、それ以外は骨髄移植を考慮する必要はありません。

Q37.PVの痒みやその他の症状に対して患者は何ができますか?

痒みは入浴時に皮膚を強く擦ると生じやすいので、海綿スポンジ等の柔らかなものを使用してやさしく洗ってください。

Q38.PVのJAK2V617Fアレルバーデン値はどのくらいですか?

50%を超える患者さんが多いですね。欧米人は平均50%ですが、日本人は平均70%と高いようです。

Q39.PVはアスピリンを服用した方が良いですか?

血小板数が極端に多くなければアスピリンは服用した方が良いでしょう。血小板が150万/μLを超えるとかえって出血しやすくなるので、ヒドロキシカルバミドでいったん血小板を低下させてからアスピリンを内服した方が安全です。抜歯など出血を伴う手術を受ける場合にはアスピリンは一週間中止する必要がありますので、必ず主治医に相談してください。

 

 

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